あのとき人柱になっていれば‥‥あるいは。
テレビをつければイルミネーションがどうとか、今年のクリスマスはケンタッキーでとか、浮かれたニュースやコマーシャルが流れる季節と相成りました。
わたしといえば、「頼むから、おまえはもうちょっと浮かれてくれ。浮かれた話題を持ってきてくれ」と親に心配されるレベルで地に足がついている。むしろ、ここまでくるとたぶん埋まってるね。浮かれる余地がないくらい深くしっかりと大地に根を張っている。
でもね、『 天空の城ラピュタ [Blu-ray] 』でシータも言ってた。
「土から離れては生きられないのよ」って。
やっぱ浮いちゃだめだよ、これからは埋まってこ?
みんな、大地に根を張り大地で暮らそ?
浮いてもロクなことにならないよ、たぶん浮いた途端に少年少女が謎の青い石に手を添えて滅びの呪文を唱えに来るから。
それでいい年こいたおっさんが1人落とされたからね。
物理的にも精神的にも。
これが浮いて数日後のことである。
やっぱりわたしは大地で暮らそう。
サンは森で、
アシタカはタタラ場で、
さいとうは大地で。
会いにいくよ、ヤックルに君をのせて(滅茶苦茶)。
クリスマスも近づいているだけあって、やはり最近寒くなってきましたね。
凍てついてるよ、最近の寒さだけじゃなくて‥‥わたしの心が。ブリザードが吹き荒れてる。
ついでに、わたしの家の冷蔵庫も凍てついてる。
設定を1番弱くしているのに、プリンが凍るからね。
冬の時期のうちの冷蔵庫は上下とも冷凍庫なのである。
でね、クリスマスって言ったらね、まーそれっぽい思い出が何もない。
今はもうお察しですよ。
毎年1人クリスマスパーティーを開催している。
シャンパンも開けてわりと楽しくやってます。
学生時代はずっと部活。
「恋人と過ごすクリスマス」とか経験したことない。
恋人追いかけずに、ずっと白球追いかけてた。
もう、ボールが友達・ボールが恋人状態。
さすがの翼くんも「いや、確かに『ボールは友達』なんて言ったけどね、さすがに限度ってもんがあるよ」って言い兼ねないレベルで一途に追いかけてた。
人生のほとんどのクリスマスは何かしらのボールを追いかけてた。
わたしは高校では青春の代名詞みたいな部活に入っていたのね。
で、入部するときに「部内恋愛は禁止だ」って監督から言われていたからもちろん部内恋愛なんてしなかったし、もともと部内恋愛するって考えすら頭になかったから、そのへんはもうバッチリ!
でね、なんの問題も起こさず真面目に部活道に励んでいたわけ。
だのにね、ある日監督からこう言われた。
「部内恋愛は禁止だと言ったが、恋愛自体は禁止とまで言ってないぞ?」って。
あー、うん。知ってた。
どこぞのアイドルじゃないんだから、恋愛自体が禁止されていないってこと‥‥知ってた。
でもね、もうそういうことじゃない。
恋愛禁止じゃないって言われて
「あーそうですか」って恋人なんてできるわけがない。
禁止でないことを知っていても、できないものはできないのである。
わかるよ、わかる。
監督がわたしに恋愛OKなことを伝えてくださるまでに、もう一人の子は2〜3人の恋人をつくってたからね。
「さいとうの浮いた話、全然聞かないけど‥‥もしかして恋愛についてのルールを勘違いしてんのかな?」って、たぶん気を遣ってくれたんだと思うの。
でもね、違うの‥‥知ってた。わたし、知ってた。
知ってたけどできなかったの!(言わせんな恥ずかしい)。
引退してから、ちょくちょく部活に顔を出していたんだけど、出す度に監督とコーチから「恋人できたか?」って聞かれてた。もうここまできたら、さすがにできねぇよっ!!!
「今年のクリスマスは恋人と過ごせるな!」って、ニヤニヤしながら言われて迎えたクリスマス当日(予定なし)。
こたつで寝てしまっていたわたしは、早朝から激しく揺り起こされることとなる。
これがね、聖司くんみたいに早朝こっそり迎えに来てくれて自転車の後ろに乗せられて「お前を乗せて坂道のぼるって決めたんだ!」「そんなのずるい!わたしだって役に立ちたいんだから!」ってキャッキャできていたら、わたしの人生もまんざら悪いものでもないなって思えた。
でも、「人生は地獄よりも地獄的である」( 侏儒の言葉 )って芥川龍之介も言ってたけど、本当そう。
目を覚ましたら、目の前にすごい剣幕の父の顔。
おまけになんか叫びながら、わたしのことめっちゃ揺すってる。
なに言ってんのかなーって、寝ぼけた脳で理解しようと耳を傾けたらね、こう言ってたわけ。
「おい、起きろ!死ぬぞっ!」って。
世はクリスマス。
本来ならばキリストの降誕を祝う日。
そんな日にわたしは実の父親に「死ぬぞ!」って激しく揺り起こされたわけ。
あれかな、もしかして人柱的な?
わたしが死んだら救世主が再臨するかも的な?
そんなロマンチックな話だったらいいんだけどね、
まあ違うよね。これも知ってた。
実際は、マイスイーツシスターがクリスマススノボー旅行のためにスキーウェアに防水スプレーをかけてたんだけど、外が寒いからって理由で居間で、しかも換気もせずに作業していたから、こたつで寝ていたわたしがモロに気体を吸い込んで無意識のうちに救世主の人柱になる‥‥なんとも格好の悪い死に方を晒すところだったってわけ。
結局、その日は終日気持ちが悪くてほぼ寝込んでいた。
なにもせずに、ただただクリスマスという日が過ぎていく虚しさを床で感じていたのである。
そう……クリスマスなんてロクなもんじゃない。
(姉はスノボー旅行を満喫して笑顔で帰ってきました)